センチュウ(=ネマトーダ)は
土の中に住む
1mm程度の透明糸状の虫です。
人の目には見えないほどの小さな虫ですが、
世界の農業の歴史は、この、
センチュウとの闘いの歴史と言っても
過言ではありません。
たいがいの土には
センチュウは居るものですが、
問題はその密度。
土壌中にセンチュウが一定以上増えてしまうと
作物の生育に
大きなダメージを与え始めるので
プロの農家などは予防策として
農薬(ネマトリンエース粒剤、ビーラム粒剤等)
を使うのが一般的です。
詳しく書き始めるとキリがないので、
また、いずれの機会に書くとして、
ここでは先ず、
農薬を使用せず
家庭菜園レベルの知識・スキル・規模
で出来る(だからこそ出来る)、
「センチュウを爆発的に増やさない」で
なんとか上手くやっていく
(私の)方法を紹介します。
その方法とはズバリ
【1】連作しない
【2】増殖植物を植えない、若しくは
後作には必ず殺センチュウ植物を栽培する
【3】太陽熱消毒で直接退治する
【4】センチュウ捕食菌を接種する
です。ハイ、
【4】以外は何も目新しいことはないですよね。
今までも対策として
散々提唱されてきたことです。
ただ、その一つ一つについて
知識が無さ過ぎて
「惜しい!」
というのをよく見かけますので。

【1】連作しない
これは栽培の基本ですよね。
それで何故センチュウが増えるのかというと、
連作すると
センチュウが休眠しないからです。
センチュウは、
ある程度その種類によって
寄生する植物が決まっていて、
宿主植物でない植物の栽培が始まると
センチュウは
再び宿主植物の栽培が始まるまで
休眠状態のままじっと何年でも待ちます。
その間は休眠中なので
数の増殖は無い一方で
捕食菌等には捕食されますので
しだいに数が減っていくのですが、
連作すると、この「休眠」が無く、
繁殖する一方となるわ、
新しい健康的な根
(センチュウにとってのエサ)
が入ってくるわ、
で爆発的に増えるわけなんです。
連作はしないことです。

殺センチュウ植物
マリーゴールド「グランドコントロール」
【2】増殖植物を植えない、
若しくは 後作には必ず
殺センチュウ植物か密度抑制植物を栽培する
センチュウには、
いくつかの種類がありますが、
問題となるセンチュウの種類は
地域によって異なります。
ここでは、
私が住んでいる関西地区でお話しますと、
対策が必要となるヤツは主に以下の3つ。
①「キタネグサレセンチュウ」
ダイコン、ゴボウ栽培時に被害を受けます。
増殖植物である
インゲン、シュンギク、ゴボウ、レタス、キク
の直後に
ダイコン、ゴボウを植える時は、
その前に、
根から殺センチュウ物質を分泌する
「グランドコントロール
(=マリーゴールド、タキイ種苗)」
を栽培します。
とても強力で、一度シッカリ殺虫すれば、
効力は3年は保ちます。
と、
ここで注意が必要なことを書きます。
十分な効果を得るためには、
栽培終了後に株を抜いて
場外へ持ち出し処分する場合は
苗を移植してから最低63日間、
栽培終了後 すき込む場合は
最低90日間は
栽培する必要があります。
コンパニオンプランツだから
植えておけば良い…わけではないんですね。
それから、
すき込む時にもう一つ。
これは生の残渣をすき込む際には
他の植物でも共通で言える事なのですが、
残渣は
瑞々しい生のまま土に入れるのではなく、
夏なら2~3日間干して、
水分が少し抜けて
しなびた感じになってから
すき込む方が良いですよ。
こうすることで
発酵が早く進み、腐敗を抑制します。
(腐敗と発酵は別物です)
その他の 殺センチュウ植物はアスパラガス、
密度抑制(休眠させる)植物は
ネグサレタイジ(=エン麦、タキイ種苗)と
サトイモです。
※サトイモは
ミナミネグサレセンチュウが増殖するので
九州等の暖地では注意が必要です。
その場合はおそらく、
後作のニンジン等は
まともな発芽さえ不可能でしょう。
②「サツマイモネコブセンチュウ」
コレ コレ。これが、
農業史上最も重要な有害センチュウ。
ウリ科全般、ナス科全般、サツマイモ、
ジャガイモ、ニンジン、ダイコン等の
栽培時に被害を受けます。
収穫皆無の激害も珍しくない、
農家が最も嫌う虫です。
増殖植物は
ウリ科、ナス科、オクラ、ホウセンカ、
ショウガ、ホウレンソウ、エダマメ等。
私は、
これらを栽培した後作(翌年の夏)には
殺センチュウ植物
「ネマキング(=クロタラリア、雪印種苗)」
を栽培します。
マリーゴールドではありませんよ。
それはネグサレセンチュウ用。
ネコブセンチュウには
マリーゴールドはイマイチです。
クロタラリアはマメ科の植物で、
その中で「ネマキング」は、
効果が期待できる
各種センチュウの幅が最も広く、
4大ネコブセンチュウ
(サツマイモ、キタ、ジャワ、アレナリア)、
ネグサレセンチュウ
(ミナミ、クルミ、キタ(△))、
ナミイシュクセンチュウ、
ダイズシストセンチュウ
に有効。
そのメカニズムはこう。
孵化促進物質を分泌し
センチュウを孵化させるが
栄養源とはならず餓死させる、
というもの。
播種から80日前後で花が咲きますから、
そうしたら切り刻んで、
これもまた2~3日間干して、
水分が少し抜けて
しなびた感じになってからすき込みます。
マメ科なので
緑肥にもなって一石二鳥~。
その他の殺センチュウ植物はラッカセイ、
密度抑制(休眠させる)植物は
ソラマメ、イチゴ、ギニアグラスです。
③「ダイズシストセンチュウ」
シストとは
雌成虫が卵を内蔵したまま
体表に硬い膜を作り死亡した状態
のことをいい、
低温や乾燥に対して非常に耐久性が強く、
内部の卵は
土壌中でシストのまま
数年間生存(休眠)することができます。
センチュウの中では少し大きいので
シストを形成した雌(約1mm)であれば
肉眼で見えます。
私も見たことがあります。
ちなみに
2大シストセンチュウのもう一つ、
ジャガイモシストセンチュウは
25℃以上の環境下では
増殖しにくい特性から、
関西に圃場を持つ私は
そちらについては あまり知りません。
すみません。
話をダイズシストセンチュウに戻します。
インゲン、エダマメ、アズキの
栽培時に被害を受けます。
増殖植物は同じく
インゲン、エダマメ、アズキです。
これらを栽培した後作(翌年の夏)にも
殺センチュウ植物
「ネマキング(=クロタラリア、雪印種苗)」
を栽培します。
その場合、
マメ科が連作となりますが大丈夫です。
その他の殺センチュウ植物はラッカセイ、
密度抑制(休眠させる)植物は
ソラマメ、エンドウを含む、
インゲン、エダマメ、アズキ以外の植物です。

ラッカセイ
【3】太陽熱消毒で直接退治する
実は、
センチュウ類は 60℃10分で死滅します。
真夏にたっぷり潅水した後、
(水分が大事)
透明ビニールを掛けて数日おけば、
簡単に60℃くらいにはなるのですが、
それは地表だけ。
5cmも掘れば
温度は穏やかなものです。。。
センチュウは
地表から10~30cmの範囲に
最も多くいますから、
深さ35cmくらいの範囲で
何度か攪拌しながら
蒸し焼きにすれば効果は絶大です。

【4】センチュウ捕食菌を接種する
「MMプラス」とか「AG土力」とか「粒状YKD」
ってご存知ですか?
そのうち「MMプラス」でいうと、
ネコブセンチュウ、
ネグサレセンチュウ、
シストセンチュウ
を捕食する拮抗微生物(キノコ系菌糸)を
自然土壌に棲息する捕食菌の
数十万倍の密度で培養し、
フリーズドライ化したもの。
いわゆる微生物資材ですな。
その他の2点も同じく
センチュウ捕食微生物系です。
あ。
「パストリア水和剤」
なんてのもありましたね。
一応、農薬ですが これも微生物です。
化学薬剤ではないので
環境に対して負荷の少ない資材。
・・・との事ですが、
私もまだ使った事が無く、
こんなのもあるみたいよ、とだけ。
おかげさまで
私の圃場はセンチュウ被害とは
ここ暫く縁がないのですが、
個人的に 非常に興味があるので、
今度、センチュウをわざと増殖して
使ってみたいなー
なんて考えてしまいます。。。

以上、
農薬を使用せず 家庭菜園レベルで
奴らセンチュウと
のらりくらりと上手くやっていく
私のやり方でした。
あぁ・・・
ホントはもっと詳しくガッツリ書きたのだけど
今回はこれくらいで・・・
では。